ゲイの視線、バイの視点。

最終的には、生きていさえいればOKだ。

#0102 All Right,All Knight.

勤めていた会社が倒産する瞬間を現場で見た経験は、僕の人生の中でもなかなかのドラマのひとつであった。

今でこそ笑い話だけれど、当時の僕は悲劇の主人公のようなというか、未来が暗くなり目先の生活すら見通せない不安に飲み込まれ、ずいぶんと神経をすり減らした。

社長も専務も課長も部長も、平社員の僕もバイトも皆、文字通りの右往左往であった。給料は何ヶ月も出ていないなか、そこから逃げ出す勇者はひとりもいなかった。

狭い世界の中で完結していると、決定権をもつ上司は生殺与奪権をもっているかのように見え、また右を見ても左を見ても、皆が右だと云うのなら、左だと感じる自分が狂っている、と見立てるのが僕のできる精一杯の論理的思考だった。

いや、おまえのその直感、感覚は狂っていないのだ…かすかなささやき声は心の底で聞こえてはいたが、生き延びるための明確な道案内までは聞き取れなかった。

当時の僕が精神的に未熟、幼稚であったことも原因だが、冷静に思考できないほど精神的に追い詰められていたゆえ、そもそも論理的に考えられる土台がなかったのだと、今ならわかるんだけどね。

結局僕がいの一番に抜け、会社都合扱いでハローワークへ滑り込めたものの、すでにメンタルが壊れていた。そこからさらに泥沼にはまり、最後は倒れるまで一直線に転げ落ちる数年だった。

権限をもつ人間たちが右顧左眄し、外野で裏付けのない言説を雄弁に語る人間がさも正しいことを言っているかのような空気というものはなかなかに抗しがたいものだ。

しかしである。

セドリック・ディゴリーはハリーの目の前でヴォルデモート卿に殺されたのだ。

権威は、闇の帝王の復活は嘘であり、セドリックの死は悲しいアクシデントだと喧伝し、異を唱えるものには懲罰が課せられる状況下である。

何も自ら悪目立ちして罰を食らいに行く必要などない。

何が起きているのか、狂っているのが自分なのか周りなのか、王様は裸なのかどうか、乗り遅れてはなるまいと皆が我先にと乗ったバスの目的地はどこなのか。冷静になれば、行き先表示板の幕が今も回転し続けている様子が目に入るのである。

温かいお茶でも飲んでひと息ついて、違うチャンネル、ソースからも情報を集め、静かに自分の頭で考え、腹に聞き、ゆっくり自分の動きを決めればよいのだ。自分がキャプテンとして、誰のコピーでもない自分の人生を生きるだけのことなのだから。

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